流れのほとり NO.26
<流れのほとりの夏景色>
玉川上水の流れのほとりは、蝉時雨れ、緑陰を涼風が吹き流れ、深呼吸すると蝉の声が胸にまで響くようです。
夏の到来は油蝉が告げてくれます。しばらくジージーと暑さと歳を自覚させられる声しか響きませんが、しばらくするとカナカナカナと、ひぐらし蝉の声が始まります。その頃には夏の暑さも増して、エアコンが効いた屋内で一日を過ごした後に緑陰に入り、蝉のコーラスに心身ともに癒されます。カナカナと聞くと、明日はどうなるカナ、今考えている問題の解決はこうカナ?これから世の中はどう変わっていくカナ?とカナカナで思いを巡らしながら散歩の歩を進めます。ひぐらし蝉の後はツクツクボウシです。その鳴き声はバイオリン協奏曲でのバイオリン独奏のように美しく、聞き惚れてしまいます。
<ツクツクボウシの鳴き声>
このツクツクボウシの鳴き声を皆さんはどのように表しますか?私は子供の時から「オーシンツクツク」と5回繰り返し、「タカシヨー」と2回鳴いて「ジー」で終わると聞いてきました。ところが広辞苑によると、その鳴き声は「おおしいつくつく」と鳴く、とあります。きっとそれぞれの地方で鳴き声の表現はちがうことでしょう。私の妻は大阪出身ですので、大阪ではどういうのか尋ねたら、知らないというのです。皆さんの地方ではどういう風に鳴き声を真似しているでしょうか?
ところで私たちが結婚する時に証人(媒酌人)としてお世話になった先生のお名前は「隆」と言います。これから9月の初めまで、散歩の最中にツツクボウシが間断なく鳴いています。その鳴き声の最後の「タカシヨー」の所に来ると「隆よー」と聞こえてしまい、「先生のことを思い出し、90歳になられた先生のご健康のことを祈らされます。
<家族・兄弟姉妹の一致>
玉川上水の木々の合間を色づける夕焼けもきれいです。真っ赤に色づいた雲の美しさはかつて北海道の富良野や美瑛で見た夕焼けに負けないほどです。
帰り道は夜の帷(とばり)が下りて蝉の声も弱まります。今度はかぶと虫捕獲隊の出現で流れのほとりは賑わいます。流れのほとりにクヌギの木が沢山生えていて、夜になるとこの時期かぶと虫が樹蜜を求めてやってきます。そのかぶと虫を捕まえようと家族でやって来る人が毎晩何十組といるのです。明るく大きな懐中電灯を持って、クヌギの木の根元から上までを照らして捜しています。捕虫網を持って高い所にいるかぶと虫を捕まえています。ある時はお父さんに肩車された息子が捕虫網で探しています。「いた~! 捕えたよ~!」興奮した子供の声が流れのほとりの静寂を破ります。
家族が一致して行動し、成果を挙げて喜びの声を挙げている、その姿を見て、私は詩篇を思います。
「見よ。何という幸せ なんという楽しさだろう。
兄弟たちが一つになってともに生きるとは。
それは頭に注がれる貴い油のようだ。
それはひげに アロンのひげに流れて
衣の端にまで滴る。
それはまたヘルモンから
シオンの山々に降りる露のようだ。
主がそこに
とこしえのいのちの祝福を命じられたからである。」
(詩篇133篇)
バビロンで捕虜生活をしていたユダヤ人たちはエルサレムに帰還してきました。その時に人々が願ったことは「兄弟たちの一致」です。家族、兄弟姉妹が仲良く心を一つにしていること、教会にいるクリスチャンたちが一つになっていることは神様が願っていることです。家族の一致、兄弟たちが愛し合っていることは、「頭に注がれた貴い油」と高山「ヘルモンからシオンの山々に降りる露」にたとえられます。聖い香ばしい油が頭から衣の端まで染み通り、高山からの冷たい空気によって冷やされて出来た露がエルサレム一面に降りて潤すように、家族、兄弟姉妹が一つになっていることは聖さ、香しさと露のようなリフレッシュを与えてくれます。そのような家族には神様の永遠の祝福があるのです。