苦難からの救い
使徒の働き7:9~16
すると、エジプトとカナンの全地に飢饉が起こり、
しかし、ヤコブはエジプトに穀物があると聞いて、
二度目のとき、ヨセフは兄弟たちに自分のことを打ち明け、
そこで、ヨセフは人を遣わして、
こうして、ヤコブはエジプトに下り、
1.ステパノの弁明
ステパノの弁明は続きます。彼は祭司長たちや長老たちに訴えられたのです。ステパノを代表とするクリスチャンたちはエルサレムの聖い神殿を汚し、壊そうとしている、と誤解に基づき糾弾されたのです。それに対してステパノは自分たちユダヤ人のルーツに遡って答えました。
(1)アブラハムについて
ユダヤ人の先祖はアブラハムです。アブラハムはメソポタミアにいた人です。そのアブラハムを栄光の神様は呼び、導いてクリスチャンにして、カナンの地に導いてきて下さったのです。神様はメソポタミアでもハランでも、カナン、エルサレムでもアブラハムとともにいて下さり、それぞれの地で彼は神様を礼拝したのです。そこが聖い神様を礼拝する所、聖なる所なのです、とステパノは語ったのです。これは聖なる所はエルサレムの神殿で、そこにしか神様はおられないと思っているユダヤ人たちの間違いを指摘したのです。
(2)ヨセフについて
ステパノは続けます。アブラハムも、その子イサクも、その子のヤコブも同じように神様をそれぞれの場所で礼拝しました。ところがヤコブの子供たちの間に問題が起こりました。あなた方の先祖のヤコブの子供たちはその時に末っ子だった自分たちの兄弟ヨセフを父親が特別にかわいがるので「妬んで」、ある日、羊を放牧している所で、ヨセフに暴行を加え、彼をエジプトに奴隷として売りとばした(9)のです。あなた方の先祖はヨセフを排斥し、こんなに悪いことをしたのです、とステパノは彼らに言います。神様が約束して下さった土地、カナンから異郷の地エジプトにヨセフを売り飛ばしたのです。私たちユダヤ人たちのこのような悪によっても神様は約束を変えませんでした。奴隷としてエジプトに売られたヨセフとともに神様はおられました。(9)エジプト人ポティファルはヨセフを奴隷として買いました。ポティファルは、神様がヨセフとともにおられ、主が彼のすることすべてを成功させてくれたのを見たのです。(創世記39:3)そして7:10にありますように、彼をあらゆる苦難から救いだしたのです。創世記を読むと詳しいことが分かりますが、ここで言われている苦難の中にはポティファルの奥さんの嘘に基づく誹謗の故に牢獄に囚人として入れられたということもありました。しかし、その牢獄の中でも「神様はヨセフとともにいて、彼に恵みを監獄の長の心にかなうようにされ」ました。(創世記39:21)また、ヨセフがする事は何でも成功するようにしてくださいました。(39:23)更に、ヨセフは夢を解き明かす力を神様から与えられ、二人の囚人が見た夢を解き明かし、助けたのに助けられた囚人たちは約束を忘れたので彼は出獄出来ずに苦難を受け続けたこともありました。ある時、エジプトの王様ファラオが夢を見ました。王様は夢の意味が分からずに、エジプト中の呪法師とすべての知恵のある者たちを呼び寄せて、彼のみた夢を解き明かさせようとしました。しかし誰も解き明かすことができません。その時に、かつて囚人だった人がヨセフとの約束を思い出し、王様に告げたのです。牢獄の中にいるヘブル人ヨセフには夢を解き明かす力があると。そこでヨセフは呼び出され、王様のみた夢について聞き、その夢を解き明かしました。その解き明かしによると、エジプトにこれから大豊作が7年続き、その後に大飢饉が7年間続くという困難がやって来ると言う意味でした。ヨセフは、王様に大豊作の間に次に来る大飢饉のための備えをするように、とアドバイスしました。王様はこのヨセフの夢の解き明かしを喜び、彼を称賛しましたが、ヨセフは「わたしではありません。神様がファラオの繁栄を知らせてくださるのです。」(41:16)と神様に栄光を帰したのです。このように、兄弟に妬まれて、裏切られて捨てられたヨセフ、主人の妻の嘘によって投獄されたヨセフ、囚人たちに約束を破られたヨセフでしたが、神様は苦難の中でもヨセフとともにおられ、救い出し、約束を守り、実行しました。ヨセフは王様に認められて、外国人なのにエジプトの宰相となったのです。神様はヨセフに特別の知恵を与え、この来るべき大飢饉に備えさせたのです。その為エジプトには飢饉にもかかわらず、備蓄した食料が充分にあったのです。
7年の大飢饉はエジプト全土に及んだだけではなく、カナンの地にも及びました。そこでヨセフの兄弟たち、父親ヤコブもカナンの地を離れて、エジプトに食料を求めていったのです。ユダヤ人の先祖たち、ヤコブとヨセフの兄弟たちは3度もエジプトに行って食料を得なければなりませんでした。そして最終的にはかつて妬んで奴隷として売り飛ばしたヨセフの愛と赦しによって助けられ、エジプトの地に住み、そこで死んだのです。彼ら、ユダヤ人の先祖75人はエジプトで神様を礼拝し生活したのです。その上、外国の地エジプトで死んだのです。
2.ヨセフこそイエス・キリストのひながた
ステパノはなぜエルサレムにいるユダヤ人たちが良く知っているユダヤ人の歴史を語ったのでしょうか?
それは彼らがステパノやクリスチャンたちがエルサレムの神殿を汚している、聖なる所を汚している、と非難しているけれども、それは間違っている、ということを歴史的事実に基づいて示そうとしているからです。
先回お話ししましたように、ユダヤ人の先祖アブラハムにとって聖なる所とは、神様が共におられる所です。アブラハムが呼ばれたメソポタミアもハランもカナンの地でもアブラハムは神様とともにいて、それぞれの場所で神様を礼拝していたのです。それぞれの場所がアブラハムにとっては聖なる所、神殿で、神様が共におられる所だったのです。
あなた方の先祖たちはヨセフを妬み、拒絶し、殺そうとし、奴隷として外国人エジプト人に売ったということを忘れたのですか、とステパノは彼らを追及しました。しかし、ユダヤ人の先祖に拒絶され、憎まれたヨセフは神様とともにいたのです。神様だけを信じ、拠り頼んで生きたのです。
そうしたらどういうことになったでしょうか?
ヨセフは次から次へと苦難に会いました。人に騙され、誤解され、無実の罪で投獄され、約束を破られて苦難に会いました。奴隷の仕事や人間関係による苦難だけではありません。大飢饉という苦難にも会いました。しかし、とステパノは言います。神様はヨセフと共にいました。苦難の中でもヨセフを守り、同僚の囚人は約束を忘れてしまいましたが、神様の時に助けを与えて苦難から救い出して下さったのです。それだけではありません。ヨセフを嫌い、いじめ、妬み、奴隷としたあなたがたの先祖ユダヤ人が食料が無くなり、エジプトまで食料を求めてきた時にヨセフは彼らを助け食料を充分に与え、いのちを救ったのです。また、彼らがヨセフを奴隷として売ったという罪を赦したのです。
このヨセフこそあなたがたが非難し、受け入れないイエス・キリストのひな型です。
あなたがたはヨセフと同じようにイエスを拒絶し、十字架に付けて殺しました。しかし、イエスはよみがえり、あなたがたの罪を赦し、救ってくださる救い主なのです。
3.神様の約束
17節を見てください。「神がアブラハムになされた約束の時が近づく」とあります。
神の約束とは、どういう約束だったでしょうか?
創世記12:3を開いて下さい(p.17)
とあります。これが神様のアブラハムへの約束です。この約束によると、神様はアブラハムを祝福し、アブラハムによって「地のすべての部族」つまりユダヤ人もユダヤ人以外の人も、世界中の人を祝福し、救って下さる、ということです。
このアブラハムによる祝福、神様の救いはどのようにして世界中のすべての人に与えられるのでしょうか?
ここでガラテヤ書3:16を見てください。(p.378)
アブラハムの子孫を通して全世界の人々が救われる、と言う神様の約束は主イエス・キリストによって成就したのです。
ところが、あなた方はすっかり歴史を忘れ、あるいは無視して、ヨセフを拒絶したように主イエス・キリストを拒絶し、十字架に付け殺してしまいました。しかし、主イエスは死に打ち勝ち、よみがえられて今も生きておられるのです。その生きている、よみがえられた主イエスを私たちは拝み、従って生きているのです。ヨセフとともにおられた主は私たちとともにおられるのです。ヨセフがあなた方の先祖を苦難から救ったように、主イエスは私たちの、そしてあなたがたの罪を赦す救い主です、
とステパノはユダヤ人たちに訴えたのです。
4.まとめ
現在、21世紀に生きている私たちもステパノ及び弟子たちと同じようにヨセフに示されている信仰に立っています。神様は私たちとともにいて、私たちをあらゆる苦難から救い出して下さることを知っているのです。パウロはこう言っています。
今、多くの人が自然災害という苦難に直面しています。大洪水、がけ崩れ、台風やハリケーンや竜巻、東日本大地震もありました。火山の噴火、山火事で多くの人々のいのちが失われ、家や畑が破壊されてしまう災害が起こっています。また、個人的に重い病気などの苦難に遭遇することも多々あります。「神様がおられるなら、なぜこんなことが起こるのか?」と叫びをあげます。
しかし、主はたとえ私たちがどんな困難に遭遇しても私たちとともにおられるのです。ヨセフはこう言っています。
ヨセフの生涯を初めから終わりまで支配し、導かれたのは主なる神様です。ヨセフの主はイエス・キリストです。私たちの生涯を支配し、導かれるお方も主イエス・キリストです。パウロは私たちに命じます。
お祈りしましょう。