流れのほとりNO.15
<高速ではなく、ゆっくりと>
もう20年近く前のことです。ある晩、寝ていると急に胸が苦しくなりました。深夜3時ごろに病院に駆け込みましたら、心筋梗塞でした。直ぐに手術を受けて一命を取り留めました。病院に行くのが遅く、心臓の筋肉の一部が壊死してしまいました。退院する時に、担当医がうまいことを言ってアドバイスしてくださいました。「牧野さん、心臓の一部が壊死してしまいました。心臓が小さくなった、と考えてください。丁度、今までは2千CCの車を運転していたのが、これからは軽自動車を運転する、というような気持で生活してください。」はい、分かりました、と真面目に答えましたが、心の中では「コーソク(高速)を止めて、一般道を走るようにします。」とダジャレを思っていました。お医者さんは続けて「まあ~、牧師の仕事は軽作業ですから大丈夫でしょう。」とも言われました。「そうか、牧師の仕事は、他の人には軽作業だと理解されているのだ。」と、その時初めて知りました。
<牧師の仕事は軽作業?>
牧師って、どんな仕事をしているのですか?と質問されることがよくあります。牧師の家が教会に附設されているような教会では、いつも教会にいますから、日頃牧師は一体何をしているのか、と不思議に思うのでしょう。このように尋ねられると、私は冗談をまじえて「牧師の仕事は主にカクシゴトです。」と答えます。
牧師は、毎週日曜日に聖書から説教をします。聴衆は大体同じ人たちですから同じ話をすることはできません。私は、聖書の一つの書を選んで、毎週その書から連続に違う話をします。今は「使徒の働き」から話しています。
そこで牧師は選んだ聖書の箇所を勉強します。そして神様の助けを祈り求めつつ、説教原稿を書きます。人によって違いますが、これがなかなか大変なことなのです。25分から30分で終わるように原稿をまとめます。私はその原稿を大体3回推敲します。それから、実際に声を出して読んで時間を計ります。声を出して読むと、原稿の分かりにくい所や、ふさわしくない表現などが分かりますので修正します。ある時は、妻に聞いてもらいチェックしてもらいます。 このように「カクシゴト」は時間と労力が要ります。この他、水曜日の祈祷会でも祈ることを励ますために短く聖書から説教をします。日曜の礼拝説教より短いですが、これも「カクシゴト」です。
<舌は火です(ヤコブ3:6)>
教会には様々な問題や悩みを持って来られる方々がおられます。牧師の大切な仕事の一つは、このような方々の相談に乗ることです。このような相談事はプライバシーのことですから、秘密を厳守しなければなりません。私は性格的におしゃべりですが、このような教会で相談された秘密は、妻にもだれにも話しません。これは簡単な事のように聞こえるかもしれませんが、実際的にも、精神的にもなかなか難しいことです。ですから、様々な教会内の事が教会内に留まらず、教会外にも噂で拡がっていきます。牧師の仕事は、秘密を守ること、「カクシゴト」をすることです。